キース・ジャレット SOLO 2014(オーチャードホール)を聴く―非対称の世界で「時」が閉じない円環となって回帰してくる。

5月6日、オ−チャードホールでキース・ジャレットを聴く。69歳という年齢を全く感じさせない覇気がみなぎり、叙情性にも富んだ往年と変わらぬ素晴らしい演奏を披露した。一音一音に心を込め、全身全霊集中し切った演奏に深い感動を覚えた。(左は、演奏会終了…

サンクトペテルブルグP.O演奏会−冴えわたるストラディヴァリウス 強い意志の女(ひと)庄司紗矢香は日本の誇りだ

1月25日、大阪の「ザ・シンフォニーホール」での、ユーリ・テミルカーノフ指揮、サンクトペテルブルグ・シンフォニー・オーケストラの演奏会を聴きに行く。 9時30分の<のぞみ21号>で新大阪駅へ。そこから大阪駅経由で大阪環状線の福島駅へ。会場はそこから…

巨匠ヘスス・ロペス=コボス指揮で、ショスタコーヴィチ交響曲第13番「バビ・ヤール」を聴く―都響定期

都響の第761回定期公演で、楽しみにしていたショスタコーヴィチ交響曲第13番「バビ・ヤール」を、現代の巨匠の一人である、ヘスス・ロペス=コボスの指揮で聴く。「バビ・ヤール」の前に、トゥリーナとラヴェルの短い曲が演奏されている。 前日ほとんど寝て…

フルトヴェングラー「ブラームス交響曲第4番」―涙なくしては聴けぬ、などなど、ブック・オフのお手柄

ブック・オフには少ないながらもクラシックのCDが置いてある。通勤経路にある某店へ何気なく寄ってみて驚いた。宝の山にぶち当たったのだ。掘り出し物が続々とあるではないか。ブック・オフのお手柄だ。で、取りあえず以下のCD6枚を買い求めた。1、ショ…

スクロヴァチェフスキー指揮で、ショスタコーヴィチ「交響曲第5番」を聴く

10月2日、読売日響第564回サントリーホール名曲シリーズを聴きに行く。左は、カラヤン広場から見た夕闇迫るサントリーホール。 スタニスラフ・スクロヴァチェフスキーの指揮で、曲目はベルリオーズ「劇的交響曲<ロミオとジュリエット>」から”序奏””愛の情…

オレグ・カエターニの指揮で、シューベルト「ザ・グレート」を聴く

久しぶりに「東京文化会館」を訪れた。前回訪れたのはいつだったのか思い出せない。 東京文化会館で強烈な記憶にあるのは、1965年、来日したスラブ・オペラ「ボリスゴドゥノフ」の公演が演奏途中で台風で中止になったことだ。シャリアピンの再来と称された”…

ヘレヴェッヘの日本公演でモーツアルト「レクイエム」を聴く

このブログは一旦店仕舞にしていたのですが、ヘレヴェッヘの本年6月の日本公演で、私にとって無二の曲とも言えるモーツアルトの「レクイエム」が演奏されたので、備忘的に書き記すため、半分店を開けることをお許しいただきたいと思います。公演会場は、所沢…

新しいブログへ移行します

音楽についてのブログもそろそろ終わりにしたいと思います。音楽テーマに絞ったブログの投稿を頻繁に行うことが難しくなりました。 そこで、同じ<はてなダイアリー>で下記の新しいブログへ引き継ぎます。本を読みながら考えるというコンセプトです。 新し…

インテルメッツオ(ちょっとひとやすみ)(5) ジャズとイージーリスニングで聴く<ダニー・ボーイ>

徳川から明治へと時代が移り、西洋音楽を音楽教育に取り入れ始めた日本は、当初全く伝統のないこの分野、主に唱歌などに外国の歌のメロディに日本語の歌詞を無理やり付けて歌うことから始めました。いわゆる翻訳唱歌です。その中でも、最も日本人の心情に合…

この名曲にこの名演あり(4)オットー・クレンペラーのバッハ<ロ短調ミサ曲> 

クレンペラーは殆ど忘れられた部類の指揮者に入ると思われます。私の世代でさえフルトヴェングラー、ワルター、トスカニーニ、あるいはカラヤン、ムラヴィンスキー、バーンスタインなどが最前線の指揮者で、クレンペラーはずっと地味で陰に隠れた名指揮者と…

バッハフェスト・ライプツィヒ

ライプツィヒで開催されている<バッハフェスト>のサイン・ボードを掲げたライプツィヒ中央駅の写真が娘から送られてきました。 毎年6月に開催されているようで、ベルリン在住ながら、ライプツィヒをこよなく愛している娘は、何かにつけてかの地を訪れてい…

この名曲にこの名演あり(3)チェリビダッケ=ミュンヘン・フィル、ほか百花繚乱の<ブルックナー交響曲第8番> 

1975年8月1日から18日までNHK/FMで放送されたシュトゥットガルト放送交響楽団の連続演奏は、当時幻の指揮者と言われたセルジュ・チェリビダッケの演奏がまとめて聴ける貴重な機会でした。勿論私はそのほとんどをテープで録音しています。35年以上経って音は…

ベルリン・フィルハーモニーホールのクラウディオ・アバドとマウリツィオ・ポリーニ<続・ベルリンの娘からの便り>

ベルリン在住の娘から、5月15日のベルリン・フィルハーモニーの演奏会の様子がスナップ写真とともにメールで届きました。 クラウディオ・アバド指揮のベルリン・フィルハーモニー・オーケストラの演奏で、ピアノがマウリツィオ・ポリーニということでした。…

フィルハーモニーホールのバレンボイムとクレメール<ベルリンの娘からの便り>

東日本大震災の直前の3月6日にドイツから日本へ帰国していた娘が、4月6日にベルリンへ戻りました。 その娘から、4月23日のベルリン・フィルハーモニー大ホールで行われた演奏会の写真をメールで送ってきました。ダニエル・バレンボイム指揮のシュターツカペ…

東日本大震災の影響か、音楽会の公演延期・中止が相次ぐ。ボストリッジに続いてヘレヴェッヘも・・・。

3月31日のイアン・ボストリッジの<テノール・リサイタル>の公演延期に続いて、今日”チケット・ぴあ”から電話があり、6月5日に予定されていたヘレヴェッヘの<ロ短調ミサ曲>の公演中止の連絡が入りました。(会場は所沢ミューズ) 地震と原発事故のせいで…

この名曲にこの名演あり(2)ジャン=フランソワ・エッセールの弾く、モンポウの「歌と踊り」第8番の懐かしさが胸迫る旋律 

今から10年ほど前のこと、事情があって1年足らずの期間、南房総の天津小湊町で過ごしたことがあります。2005年に鴨川市に合併されましたが、日蓮の生まれたことで有名で、清澄寺や鯛ノ浦などの名勝がありました。2001年の2月から同年11月までです。 南房総は…

この名曲にこの名演あり(1) チョン・トリオの「偉大な芸術家の思い出」―これは地球文明への挽歌?

東北関東大震災と福島第一原発の深刻な事故の後は、どうも音楽を聴く気持ちが萎えてしまっています。今まで当然のものとして疑いを持つことのなかった人間存在の基盤が今にも崩れ落ちそうな事態に直面し、その上に乗っているあらゆる文化現象がすべて空しい…

国立能楽堂で世阿弥の<高野物狂>を観る。そして音曲に酔いつつ空海について考える。

4月6日、午後2時より、国立能楽堂の4月定例公演で、狂言<八句連歌>と、能<高野物狂>を観ました。久しぶりに暖かい日で気持ちよく晴れ上がった青空の下、国立能楽堂は大勢の観客であふれていました。敷地内の桜の樹も満開に近く、このところ東日本大震災…

東北地方太平洋沖地震に茫然、新井白石の『折たく柴の記』を読み、人としての出処進退の見事さを学ぶ。

今回の大地震に際して思い出したのは、矢張りと言うべきか、新井白石の『折たく柴の記』に記述されている江戸を襲った元禄16年の大地震の体験談のことです。(同書には、他に宝永4年の富士山大噴火の記述もあります。) 中央公論社の「日本の名著」の輝かし…

<緊急報告>東日本巨大地震と、47年前の新潟地震

3月11日午後に発生した三陸沖を震源とする東日本巨大地震に遭遇したのは、勤め先の病院の事務室においてでした。大きな揺れを感じながら事務室の壁に手で身を支えながら、思い出したのは昭和39年に起きた新潟地震のことでした。 新潟地震が起きたのは昭和39…

ベートーヴェン<ピアノソナタ第32番、作品111>第2楽章―晩年のベートーヴェンが辿りついた何ものにも捉われない薄明の中の無心

3月4日、偶然NHKテレビの芸術劇場にチャンネルを合わせると、何と懐かしいことに、昨年10月にベルリンのフィルハーモニー室内楽ホールで聴いて以来のアンドラーシュ・シフの姿が目に入りました。今年2月来日時の演奏の放映です。あのときと全く同じような服…

インテルメッツォ (5) (ちょっとひと休み) 音楽を聴くのをちょっとひとやすみして・・・<読書><落語><能>そして<論語>                                                      

このところ音楽を全く聴いていません。2月13日に、ブルガルディエン=シュタイアーのコンサートに行って以来、音楽CDからは全く遠ざかったままです。ときどきこうした時期が訪れます。棚に並んだ音楽のCDの列を眺めていても、今はさっぱり気持ちがそそられま…

喜多流能「竹雪」を観る―国立能楽堂にて

2月18日(金)に職場の同僚3人と共に、国立能楽堂にて、定例公演の狂言「惣八」と、喜多流能「竹雪」を観ました。(今回は狂言についての言及は省略します。) 「竹雪」は曲目としては稀曲であり、現在ではシテ五流の中でも喜多流と宝生流でのみで、それもま…

クリストフ・ブルガルディエン&アンドレアス・シュタイアー リート・デュオ・リサイタル <所沢ミューズ>にて

2月12日(日曜日)「所沢ミューズ」で標記のリサイタルが行われました。寒さも少し緩んだ昼下り、真っ青な空の下を期待を胸に所沢ミューズへ向かいました。午後3時の開演です。このリサイタルのS席が、3,500円と言うのは信じられない安さです。左は、公演の…

バルトークあれこれ(2)弦楽四重奏曲は面白すぎ?

大学時代、地元(新潟)のアメリカ文化センターで借りたジュリアード弦楽四重奏団の演奏するバルトークの弦楽四重奏曲第4番のLPを聴いて稲妻に打たれたような衝撃を受けたことを思い出します。初めてまともに向き合って聴いたこの手の曲は、当時の私にはいさ…

バルトークあれこれ(1)民俗音楽研究家としてのバルトーク

伊東信宏氏の著書『バルトーク 民謡を「発見」した辺境の作曲家』は、<はじめに>にあるとおり、 「作曲家バルトークの伝記ではない。・・・ここで目指しているのは、バルトークという音楽家の六十四年にわたる生涯を、民俗音楽の研究活動という側面から見…

人間は深い淵だーアルバン・ベルク<ヴォツェック>より

Der Mensch ist ein Abgrund,es schwindelt Einem,wenn man hinunterschaut.... mich schwindelt... 人間は深い淵だ、目がまわる その奥底を覗くと 目がまわる (<ヴォツェック>第2幕第3場) これはヴォツェックがマリーと口論の果てに絶望に陥り、己の来…

エスピオナージュの系譜と、その舞台となった冷戦時代に翻弄され続けた作曲家ショスタコーヴィチの「森の歌」

しばらくぶりに日本のエスピオナージュを読みました。第53回江戸川乱歩賞を受賞した曽根圭介の「沈底魚」(講談社文庫)です。文章がやや類型的なのと会話があまり上手いとは言えないので、始めのうちは読み続けられるか心配していましたが、やがて物語も快…

聖夜のバッハ、コンスタンチン・リフシッツの<ゴルトベルク変奏曲> 所沢ミューズの豊饒と神聖

実際は聖夜でもなく、夜でもなく、12月25日の午後3時の開演でした。でも、コンサートが終わった午後5時頃は、会場を出ると冬の短い一日も既に暮れ方を迎え、会場の所沢ミューズ前の広場に立つ木々に施されたクリスマスのLEDの電飾が鮮やかに目を引きました。…

イアン・ランキンのミステリー『黒と青』は<ローリング・ストーンズ>のアルバム・タイトルで、本文はロックなどの名曲案内だ(その2)

『ミック・ジャガーの真実』(福武書店、1993年10月)という本があります。まあ、屁のツッパリにもならない他愛のない本ですが、この度の市川海老蔵の喧嘩騒ぎなどは、この本に書かれているミック・ジャガーを初め、ブライアン・ジョーンズやキース・リチャ…