<所沢ミューズ>でツィメルマンの、オール・ショパン・プログラムを聴きました

 
昨年に続いて、クリスチャン・ツィメルマンが「所沢ミューズ」でピアノ・リサイタルを行いました。’06年、’07年、昨年に引き続き4回目の公演となります。今年のプログラムは、昨年のベートーヴェンシマノフスキーなどと異なり、ショパン生誕200年という年に当たるため、ツィメルマンの自家薬籠中とも言えるオール・ショパン作品で構成されました。私がここへ来たのは、2月11日の樫本大進の<バッハ、無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番>などのリサイタル以来、今年で2度目です。
 ツィメルマンは、現存するピアニストでは私が最も愛し、尊敬するピアニストです。(余計なことですが・・・。)













 曲目などは以下の通りです。
(2010年6月12日(土)17:00、所沢市民文化センター ミューズ アークホール)
ノクターン第5番 嬰へ長調op.15-2
★ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調op.35
スケルツォ第2番 変ロ短調op.31
(休憩)
★ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 op.58
舟歌 嬰へ長調 op.60
 
 左の写真は、所沢ミューズの全景です。
 所沢ミューズは、所沢市の運営する(「財団法人所沢市民文化振興事業団」理事長は所沢市長の当摩好子さん)自治体ホールなので、都内の一流ホールに比べてチケット代が目に見えて格安で、おまけにホール自体も音響の素晴らしさでは決して引けを取りません。今回の演奏会で用いられたのは、大中小と3つあるホールの内の大ホール「アークホール」で、3階まであるシューボックス(靴箱型)タイプで、客席が2,000席あります。私が時折聴きに行く都心のホール(「東京オペラ・シティ」「東京芸術劇場」「サントリー・ホール」など)にも、音響の良さでは勝るとも劣りません。また、公演内容も実に充実しており、都心のホールにも決して引けを取りません。(地元の身贔屓は割り引いて聞いてください。)
 アークホールには、日本最大級と称するオーストリアのリーガー社の制作によるパイプオルガンが備え付けられています。(11月3日、このホールで、日本のコンサートオルガニストの第一人者の松居直美さんが東京交響楽団とともに演奏を行ないます。)
 ツィメルマンについては改めて言うことはありません。最後の演目の<舟歌>が終わった後の満員の聴衆のスタンディング・オベーションのすさまじさは、何回も来ているこのホールでも初めて見る光景で、心底驚きました。
 私の席は、1階24列34番で、正面に向かってやや右側、ピアニストの手がちょうど隠れて見えないという位置でした。
 この座席位置での音の響きは、ピアニッシモの繊細な音も実に美しく響いて素晴らしかったのですが、ただフォルテッシモでは、若干残響が強すぎるような気がしました。(気がしただけで、専門家ではないので正直のところ、よくは分りません。)
 今回実感したのは、普段聴くCDなどの複製芸術は、どれほど技術が進んでも、生の演奏とは次元の違うものだ、ということです。超一流のピアニストが十分に調律されたスタインウエイで、音響効果に資金と知恵を傾注した大ホールに展開する音のタペストリーは、再生技術ではかなうはずのない、まさしく陶酔の極みでした。
 複製芸術に関する考察はで、「レコードの虚像と実像」相澤昭八郎著(朔北社、1999年)の奥深い思考と検証に教えられることが大です。録音を巡る対極的な立場、ということでチェリビダッケとグールドを中心に複製芸術の在り方について論考を展開しています。 
 ここでは、今回演奏された<ノクターン第5番op.15-2>と<スケルツォ第2番op.31> を、ツィメルマンの現在より若い時の映像で再現してみたいと思います。