Core'ngrato

 標題の曲(日本語では「つれない心」あるいは「カタリ・カタリ」)は代表的なナポレターナです。私がこよなく愛する曲のひとつですが、イタリアの民謡歌手のみならず、著名なオペラ歌手を始めとする多くの歌手たちが、コンサートなどで好んでこの曲を取り上げて歌っています。

この曲は、1911年にナポリ生まれの大テノール歌手のEnriko Caruso(エンリコ・カルーソ)がカーネギーホールで創唱したもので、アメリカに帰化していたイタリア人の作曲家、サルバトーレ・カルディッロによって作られたものです。その後イタリアでも人気を博し、ついにはナポレターナの代表曲になりました。この曲を初めて聞いたのは、多分はるか昔、映画「ナポリの饗宴」の中だったと思います。

 かつては、この曲といえば先ずGiuseppe di Stefano(ジュゼッペ・ディ・ステファーノ)に指を屈したものです。彼の情感あふれる絶品の歌い回しには随分酔いしれてきました。他のテノール歌手とは違い、陰影の濃い、感情表出の巧みな実に味わい深い歌い方をします。

 Core'ngratoは、かつてナポレターナの王様とも言われたSergio Bruni(セルジオ・ブルーニ)やその後継者とでも言うべきClaudio Villa(クラウディオ・ビルラ)の西洋演歌的な独特の節回しを持つ歌いっぷりが素晴らしく、誰にもマネのできない天賦の才というものを感じます。特に、ブルーニを聞いたときには、軽いカルチャー・ショックを感じました。また、ビルラの輝かしい高音の伸びにはカタルシスを覚えます。イタリア人ながらももっぱら米仏で活躍したTino Rossi(ティノ・ロッシ)のソフトな歌い回しも負けずに魅力的です。
 以下の左は、セルジオ・ブルーニ、右は、クラウディオ・ビルラの歌う<Core'ngrato>です。

 オペラ歌手も、カルーソから始まって、Schipa(スキーパ、五十嵐喜芳さんの先生です。)、Gigli(ジーリ)、Tagliavini(タリアヴィーニ)、Corelli(コレルリ)など、少し時代を下れば、いわゆる三大テノール歌手以下まことに多士済々です。それぞれまことに堂々たる歌唱を披露しています。