멍에

 思えば、セルジオ・ブルーネから受けたカルチャー・ショックに比べれば、はるか昔ソウルで김수희(キム・スヒ)の멍에(モンエ)を初めて耳にした時のそれはさらに鮮烈なものでした。
 モンエを初めて聞いたときのことは今でも忘れません。一瞬全身の血の流れが変わったかのような衝撃で、魂が震撼したのを覚えています。まさに、当時のインモラルな日常とすさんだ心の時空の中に、突然キム・スヒという非日常的仮象がくさびのように打ちこまれたのです。かれこれ26〜7年前のことです。
 you tubeにキム・スヒがモンエを歌っているすばらしいライブ映像がありました。

 彼女は日本で言えば、八代亜紀さん、石川さゆりさん、それに藤あや子さんを一緒にしたような、韓国では誰知らぬ者のいない超有名なトロット歌手なのですが、単にトロット歌手というカテゴリーではくくり切れぬ、聞く人の心を捉えて離さぬ凄さと奥深さがあります。キム・スヒこそ、それ以後私がトロットの世界に深く沈潜していくことになった大きな契機となった存在でした。
トロット(트로트):韓国特有の伝統を持った演歌と思えばいいのですが、詳しくはWikipediaを参照してください。
 検索のためにハングル文字を入力するときは、WindowsXPなどにはハングル文字のフォントとKorean Input System(IME2000)がもともと入っているので、韓国語のキーボードを追加した上で、手書きで入力します。例えば「멍에」と、あるいはもうひとつの代表曲「너무합니다」と入力します。
 これらの歌には、コンサートでのステージを含め、異なったバージョンがいくつかありますが、動画共有サイトに投稿されたステージでの熱唱、肩と襟を白っぽい飾りであしらった濃紺の衣装で歌う「ノムハムニダ」は、キム・スヒ渾身の絶唱であり、聞いていて全身が粟立つような興奮と感動を覚えます。
 この二曲を今日まで何百回となく聞き続けてきましたが、聞くたびに新たな感動を覚え、いまだ決して聞き飽きるということを知りません。

 今はもっぱら「Kimsoohee Yesterday&Today/スーパーヒット38」(SeoulLife Record)というCDを聞いています。円熟した素晴らしい歌唱が聞けます。楽天市場を通じれば、韓国から直送してもらえます。
「キム・スヒ」と「モンエ」を愛するあまり、1985年に出版した詩集「お任せ料理店」のあとがきに、恥ずかしくもなく引用したほどです。(以下の引用は、その部分)
「・・・台風の余波にてくそ熱いこの日、桜島の灰の狂い舞う薩摩の国の茅屋で、金秀姫の「モンエ(멍에)を聴きつつ擱筆す。」
 最後に、キムスヒが珍しくポピュラーな曲「カスマプゲ」を歌っている映像を観てみます。

「モンエ」は韓国では、既にスタンダード・ナンバーとなっていて、多くのの有名歌手がカバーしていますが、その中から、「第三漢江橋」のヘウニの歌った映像を観てみます。